3.人生の自己計画
(3)「この世」への再訪
ホイットン博士の被験者たちによると、裁判官役の魂の助言を受けながら、次の人生の計画を立ててしまうと、いつでも再び肉体へと下降することができる。肉体を持って生まれ変わるということは、まさに「修行への旅立ち」であるため、その試練を待ち望む魂もあるが、ほとんどの魂は、再び物質界の拘束を受けることに気が進まないと言う。
ある被験者は、古代ギリシア時代の人生で少年たちを虐待したため、指導役の魂から「次の人生では自分が同性愛者として虐待を受ける経験を持ちなさい」と助言されたものの、「男の慰み者になるだって!それだけは勘弁してくれ」と、催眠状態のまま悲鳴を上げた。その人生の回想が終わった後、彼は「指導役の魂たちの助言で嫌々ながら選んだのですが、選んだからには最後までやり遂げなければなりません。あの身体に入っていくしかありませんでした。」と述べている。
肉体に宿らないでいる期間、つまり中間生にいる期間が、この世の尺度でどのくらいの長さになるのかは、人により、またそれぞれの生涯によって、かなりの開きがある。ホイットン博士の被験者たちの場合、死んでから次の転生までの間は、最短で10カ月、最長では800年以上にも及んでいるが、平均すると40年程度だという。ただし、この間隔は、過去数百年の間に確実に縮まってきており、短期間の休養で次々に生まれ変わらなければならなくなっている事態は、世界的な人口増加の推移とも一致している。例えば、被験者のうち数名は第二次世界大戦で死んだ後、すぐに転生してベビーブーム世代に加わったことを催眠状態で証言している。
この世に再び生まれてくるにあたり、魂はみな、中間生にいる間の記憶や次の人生計画を、全て消去した状態で生まれてくる。学生にとって、試験の前に問題や解答を知っていては効果がないように、人生という名の問題集においても、これらの情報は知らないでおく必要があるためである。自分が今回の人生で将来に出会うように計画した事件をかいま見てしまった被験者たちの多くが、催眠状態のまま、ホイットン博士に、「催眠を解く際にその記憶を意識から消して欲しい」と依頼するのも、そのためである。「どうか目が覚めたら、このことを思い出させないでください。自分で台本を書き直したくなってしまうかもしれませんから。」と、被験者たちは哀願する。自分の未来を語っている最中に、自分で催眠状態から跳ね起きて、それまでの話を一切思い出せなくなった被験者もいる。
一方で、自分の立てた人生計画を催眠状態で知り、ホイットン博士に予言した被験者たちも少なくない。その予言が近い時期のもので、その実現を確認できる種類のものである場合には、「常に正しいことが証明された」という。
再び転生しようとする魂が、実際に肉体の中に入ってゆくのは、誕生の数カ月前から、子宮から出た直後までの間のいつの時点かであるらしい。今後、魂がいつ肉体に宿り、いつ去ってゆくのか、つまり人間がいつ組織細胞の塊から人間になり、いつ再び組織細胞の塊へと戻るのかが確認されるようになれば、堕胎や脳死の認定問題にも大きな影響を与えることであろう。例えば、被験者の一人はこう語る。
「私は分娩室にいて、母とその周囲にいる医者たちを見守っていました。進行中の全てのもののまわりを白い光が取り囲んでおり、私はその光と一体でした。やがて『生まれてきますよ』という医者の声が聞こえ、私は新しい身体と合体しなければならないということがわかりました。生まれてくることには全く気が進みませんでした。光の一部でいることが、とても素敵だったからです。」
いずれにしても、退行催眠によって、被験者たちから死に対する恐怖が見事に消え去ってゆくことは、紛れもない事実である。ある被験者は、「死ぬことが、とても素晴らしいことだとわかりましたから、これで私は死を楽しみに待つことができます」と語る。
そして、退行催眠によって中間生の記憶をよみがえらせた被験者たちの証言は、根本的な一点において、皆同じく手厳しいものであったという。それは、「自分がどのような人間で、どのような環境にいるかということは、全て自分の責任である。自分自身が、それを選んだ張本人なのだ」ということである。この点について、ブライアン・L・ワイス博士も、退行催眠中の被験者の口を借りた指導役の魂から、ホイットン博士が到達したものと同じ内容のメッセージを受け取っている。
「お前たちは、強欲を克服することを学ばなければならない。もしもそれができなければ、それは次の人生に持ち越される。そしてその重荷は、ますます大きくなってゆく。一回一回の人生で借りを返しておかなければ、後の人生は、ますます困難なものとなるだろう。どのような人生を送るかは、お前が自分で選択しているのだ。だから、お前は自分の人生に、100パーセントの責任がある。自分で選択しているからだ。」
自分の過去生に基づいて次の人生が選ばれる仕組みをかいま見てしまうと、退行催眠の被験者たちは、改めて自分自身に重い責任があることを認識せざるを得ない。しかし、畏敬すべき進歩の過程を理解した被験者たちは、その重責に恐怖するよりも、むしろ深遠な宇宙の法則に対して、深い感謝の情を抱くのである。